V-Ray 6, for 3dsMax Update 2 サイドノート
サイドノート
このページでは、V-Ray 6.2 アップデートであまり解説されてていない変更部分に焦点を当てて解説しています。
V-Ray 6.2の主な新機能に関しては、製品ページ や ニュースブログ を参照ください。
V-Ray 6日本語ドキュメントも更新しています。
不具合の修正
このビルドから日本語UIをサポートしていますが、この周辺でいくつか不具合が発見されており対応中です。
V-Ray 6, Update 2 for #3dsMax の公式ビルドが12月21日版に更新されました。V-Ray 6 for 3dsMax, Update 2の 公式ダウンロードインストーラーのビルドが 6.20.02 に入れ替わっています。
日本語メニューでのChaos Scatterクラッシュ、保存したシーンを開くとマテリアルサンプルがグレーアウトする不具合、V-Rayメニューが増殖する問題、V-RayIESライトの開くウィンドウで.iesファイルが表示されない不具合が修正されています
https://download.chaos.com/?platform=49&product=47
6.20.02 Hotfix [2023年12月21日]
以下のホットフィックスが適用されています:
改良
V-Ray
- V-RayメニューにV-Ray Listerへのメニューを追加
- V-Ray ListerにアクセスできるMaxScript関数を追加 (vrayShowLister())
不具合の修正
V-Ray
- 特定のシーンで 6.20.00 に更新した後、アダプティブライトによる正方形のアーティファクトが発生する問題
- 特定のシーンでSSSとアダプティブライトを使用するとアーティファクトが発生する問題
- 英語以外の言語で 3ds Max を使用している場合、クアッドメニューに複数の V-Ray プロパティ項目が表示される問題
- V-Ray for 3ds Max 日本語ローカリゼーション環境でV-Ray IES ライトのファイル選択ダイアログで.IES ファイルが見えない問題
V-Ray and Vantage
- ライブリンクでアニメーション化された ForestPro オブジェクトがクラッシュする問題
Chaos Scatter
- 階層/グループモデルのエッジトリミング問題 (現時点では、エッジトリミングにはオブジェクトが要素に分かれている事が必要です)
- アイソレート選択時のCPU 負荷が高くビューポート更新が遅いという問題
- スキャッタープリセットのインポートダイアログのタイトルを修正
VRayMultiTexがBerconTileのタイル毎入力をサポート
V-Ray 6.2の VRayMultiTex ランダマイズがBerconTileの「タイル毎」入力をサポートしました。
BerconMaps(フリープラグイン)はV-Rayとは別にインストールが必要です。ダウンロードはこちらから
BerconMaps_[バージョン]_64.dlt を C:\Program Files\Autodesk\3ds Max [バージョン]\Pluginsフォルダにコピーしてください。
これまでBerconTileのタイル毎にテクスチャーをセットするには、有償の MultiTexture というプラグインが必要でしたが、V-Ray 6.2からこのプラグインを使う必要が無くなりました。
この機能を活用すると、この様な1枚の高解像度木目テクスチャから、VRayMultiTexとBerconTileを使用して自然な木目タイルを作成できます。
VRayMultiTexとBerconTileの「タイル毎」入力を使用し、1枚のテクスチャから複雑なタイルテクスチャを作成するチュートリアルビデオ
Adaptivity clamp の考察
V-Ray 6.2 のイメージサンプラーには、新しく “Adaptivity clamp”パラメーターが追加されています。これは、白飛びする領域のイメージサンプリングを抑制する機能です。
このオプションの目的は、画像の露出過度(白飛び)領域のサンプリングを減らす事です。Chaosチームは複雑なライティングシナリオを計算するための最適化された方法に取り組んでおり、V-Rayがランプシェードやハイライト部分等、非常に明るいピクセル領域に多くのサンプル時間を費やしますが、トーンマッピングやクランピングによって結局白飛び領域のノイズが隠されてしまうため、そこにサンプルを増やしても画像はあまり改善されません。特に複雑なシーンでは、画像のこれらの領域をサンプリングすると、画像の残りの部分をすべてサンプリングするよりも時間がかかる事があります。
ここに、光沢(glossy)のある屈折チューブをスフィリカルライトに巻き付けた簡単なテストシーンがあります。以前の設定(adaptivity clamp ~100ほど)では、V-Rayは光沢面に多くのサンプルを費やしていますが、これらのサンプルは実際には最終的なレンダリング画像にあまり寄与していません。新しいデフォルトのadaptivity clamp 1.5は、レンダリング結果を同じに保ちながら、これをより高速にレンダリングします。
古いバージョンで保存されたシーンをV-Ray 6.2以降で読み込むと、念のため、以前と同じ結果を生成する為にadaptivity clampの値が 100 に設定されます。V-Ray 6.2で作成した新しいシーンやレンダリングセットをリセットした場合、adaptivity clampはデフォルトの 1.5 となります。
このオプションがいわゆる「FireFly (白いドット)」の除去に役立つかどうか知りたいと思うユーザーも多いでしょう。このオプションは、V-Rayが白飛び領域に配置するサンプル数のみをコントロールする点に注意してください。これは、従来のサブピクセルのカラーマッピングやクランピングとは異なります。そのため、fireflies、強いDOF、またはその他の困難なサンプリングシナリオには特に役に立ちません。
Chaosチームでは並行して、firefliesのフィルタリングも研究しており、これが次のアップデートで導入できる事を願っています (何年にもわたって幾つかのアプローチをを試しましたが、どれもあまりうまく機能しないようでした。現在気に入ったアプローチにたどり着いたと思いますが、まだ作業が必要です)
シャドウセレクトエレメント
Light Select レンダーエレメントに新しくシャドウセレクト(Diffuse/スペキュラ)モードが追加されました。
シャドウセレクトレンダーエレメントは、選択したライトで照らされたオブジェクトによって投影されるシャドウの反転マスクとして機能します。このレンダーエレメントを使用して、ポストプロダクションで影を明るくしたり、暗くしたり、色合いを変えることができます。
シャドウセレクトは2つのタイプに分かれています:
ダイレクトDiffuseシャドウ(Direct Diffuse Shadow) – これは、選択したライトで照らされたオブジェクトによって投影されるシャドウ内に含まれている照明情報を抽出します。シャドウが投影されるオブジェクトは、これを表示するためにマテリアルに拡散(diffuse)を表示するマテリアルを持っている必要があります。
ダイレクトスペキュラシャドウ(Direct Specular Shadow) – これは、選択したライトで照らされたオブジェクトによって投影される影に含まれているスペキュラ(ライトの一次反射)情報です。シャドウが投影されるオブジェクトを表示するには、マテリアルに反射と光沢(グロシネス)1.0以下がある必要があります。
マットオブジェクト (シャドウ キャッチャーまたはVRayオブジェクトプロパティでマットサーフェスに設定されているオブジェクト) に影を落としてレンダリングする場合は”マットオブジェクトのみ”(Matte objects only)チェックボックスを有効にします。これは、ダイレクトDiffuseシャドウでのみ使用できます。
※”マットオブジェクトのみ”(Matte objects only)チェックボックスは V-Ray 6.2 3dsMax の時点では存在しません。V-Ray 6.2 Mayaには存在します。
一般的なセットアップ
1. レンダーエレメントを追加
2. モードを ダイレクトDiffuseシャドウ(Direct Diffuse Shadow)もしくはダイレクトスペキュラシャドウ(Direct Specular Shadow)にセット
3. 希望のライトを「含む/除外」リストにセットします
4. 合成:VRayShadowレンダーエレメントと同じで、シャドウセレクトをBeautyから削除(マイナス)して、再度追加(Add)する必要があります。
ユースケースによって異なりますが、完全なシャドウ選択エフェクトを得るには、ダイレクトDiffuseシャドウ(Direct Diffuse Shadow)とダイレクトスペキュラシャドウ(Direct Specular Shadow)の両方のタイプを生成する事をお勧めします。
3dsMax版でのセットアップ:
Maya版でのセットアップ: 。(Mayaでは、アウトライナでvrayRE_Light_Select選択セットに希望ライトを中央ボタン&ドラッグして追加します。)
Nukeで合成する場合の簡単な例:
注意すべき点:
1. V-Ray GPU を使用してレンダリングすると、アダプティブドームで誤った結果を生成する事があります
2. ダイレクトスペキュラシャドウ(Direct Specular Shadow)モードではまだサポートされていないライトがいくつかあります:Maya Directional light, Maya Area Light with GPU
3. GPU レンダリングでVRayMtl の結果が正しくない可能性があります
VFBのクリップボードへのコピー
V-Ray 6.2 のVFBからクリップボードのコピーが「現在のVFB表示内容をそのままコピー」する様に挙動が変更になっています。(以前のバージョンは、VFB表示内容に関係なく表示チャンネルをコピー)
この挙動を活用すると、VFBのCryptomatteピッカーとプレビュー表示をコンポジター(Photoshop)等のマスクビルダーの様に使う事ができます。PhotoShopにCryptomatteプラグインが入ってなくてもCryptomatteが活用できます。
お手軽にマスクが作れるので、クイックな編集に便利です。
V-Ray 6.2 の 3dsMax, Maya, CINEMA 4D, SketchUp, Rhino 全てで利用できます。
3dsMax 2024のカラーピッカー問題に関して
3dsMax 2024の新しいカラーマネジメントにより、V-Rayでカラーピッカーに 15 未満の値を入力し、再度カラーピッカーを開いた際に値が丸められる件について、こちらは V-Ray側の問題ではなく、3dsMax側の問題である事をChaosチームは認識しています。
2024年2月1日に 3ds Max 2024.2.1 Updateがリリースされ不具合が修正されました。
https://help.autodesk.com/view/3DSMAX/2024/JPN/?guid=3dsMax_ReleaseNotes_3dsmax_2024_2_1_releasenotes_html
Chaosフォーラムでの該当スレッド
https://forums.chaos.com/forum/v-ray-for-3ds-max-forums/v-ray-for-3ds-max-problems/1183061
autodeskの3dsmax開発者は以下の様にコメントしています:
https://forums.autodesk.com/t5/3ds-max-forum/2024-color-picker/m-p/12427369/highlight/true#M210873
・2024のカラーピッカーは、 2023のカラーピッカーと同じ色の忠実度を持っています。
・2024のカラーピッカーは世界標準の8ビット sRGB値を使用するようになりました。したがって、同じRGB番号を使用して他のアプリケーションと相互運用できます。
・レンダラーはカラーピッカーの「表示」値を使用するのではなく「シーン」の値を使用するため、古い3dsmaxシーンは以前と同様に3dsMax 2024で開いてレンダリングできます。
言い換えれば、これらを実行している限り、問題はありません。
・カラーピッカーの表示フィールドに 15 未満の値を入力しないでください。 15 より小さい値は、2023 ピッカーに 0 を入力するのと同じになります。
・カラーピッカーを再度開いた際の数値の違いは無視してください。欠落している中間強度は 2023 年以前のバージョンでは利用できませんでした。
※おそらく、従来の 0~255 でのカラー指定を辞めて、2024では 浮動小数点でのカラー指定に切り替える事をautodeskチームは推奨しています。旧バージョンでは出来なかった繊細なカラーが指定できます。なおV-Rayでは従来からカラーピッカーを使わず、VRayColorMap で浮動小数点値でカラーを入力できます。
3dsMax標準の「カラーマップ」でカラーを指定する回避策もあります。
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