V-Ray と 3ds Max カラー管理の操作 (新しいOCIOデフォルト)
概要
この記事[sauce]では、セットアップ方法を明確にし、3ds Max標準のOCIOベースのカラー管理に関するよくある質問に回答し、役立つワークフローをユーザーに理解してもらうことを目指します。
新しい 3ds Max OCIO デフォルトの概要 (3ds Max 2024以降)
3ds Max のカラー管理設定は “レンダリング”メニュー > [カラー管理…] にあります。
カラーマネジメントモード
デフォルトでは OCIO コンフィグレーション モードが適用されます。
このOCIOコンフィグで使用されるファイルは、以下のフォルダに見つかります:
C:\Program Files\Autodesk\3ds Max 20XX\ColorManagement\ocio_configs\3dsmax_default_ocio\
なお、特にカラー管理が必須というワークフローでない場合は、「ガンマワークフロー」にする事で、3ds Max 2024 以前と同じデフォルトのカラー管理になり、余計なトラブルを避ける事ができます。(この記事も読む必要ありません)
レンダリングカラースペース
3ds Maxデフォルトでは、レンダリングカラースペースとして ACEScg が使用されます。
このカラースペース設定は、V-Rayのカラー管理設定 (レンダリング設定 > 設定タブ > カラーマネジメント) と自動的に同期されます。
表示とビュー
これらの設定は、モニターのキャリブレーションと画像に適用するビュー変換によって異なります。デフォルトモードは「自動」で、通常は調整する必要はありません。
個々の設定をカスタマイズするには「自動」チェックを無効にし、「拡張設定を表示」にチェックします。
入力イメージファイル
この表は、入力する画像のファイル名に基づいてカラースペースを自動的に割り当てるルールを示しています。これはV-Rayカラーマネジメント設定の「VRayBitmapテクスチャのRGB 原色」と同様の機能ですが、こちらにはカスタマイズオプションがあります。
レンダリング出力の規定値
これらの設定は、出力ファイルに適用されるカラー変換を制御します。
これらの機能は VFBのOCIOディスプレイ補正レイヤーにある「画像に保存」オプションと同じであり、従来のガンマワークフローを使用する場合のガンマアプリケーションに類似しています。
レンダリング出力の既定値は、3ds Max を通過する全ての画像出力に影響します。これには以下が含まれます。
- 3ds Maxの共通出力(レンダリング設定 > 共通パラメータ > レンダリング出力)
- V-Rayの個別レンダーチャンネル保存(レンダリング設定 > V-Rayタブ > フレームバッファ > レンダーチャンネルを分割)
- VFBの「現在のチャンネルを保存/別々のファイルに保存」
3ds Max 2026 以降には、リニア/対数(log)形式画像にディスプレイ/ビュー変換をベイクするオプションがあります。ただしリニア/ログ(32bit/16 bit float)イメージの場合、一般的なワークフローでは、ポストプロセスソフトウェア(Nuke, Fusion,AE) 側でビュー適用するのが業界の一般的なフローです。
V-Ray側でカラーマネジメントを独立して行うように設定するには、3ds Max のカラー管理を無効にし、適切な設定を調整します。方法については ACEScg ワークフロー設定ガイドをご覧ください。
よくある質問と回答
出力した .png / .jpg ファイルを VFB の結果と一致させるにはどうすればよいですか?
8 bitの .png / .jpg ファイル形式には通常ディスプレイ補正(ガンマ補正)が適用されています。VFB結果と同一の結果を得るには、画像保存時にディスプレイ補正を適用する必要があります。ディスプレイ補正を適用する保存方法は2通りあります。
方法1:
3ds Max (2026以降) のカラー管理オプションの”レンダリング出力の既定値“を「表示 / ビュー変換」に設定し、ガンマエンコード形式の”表示”と”ビュー変換”の設定をV-Ray VFBのディスプレイ補正のOCIO設定と一致させます。
方法2:
3ds Maxのカラー管理設定でレンダリング出力の既定値を「変換なし」に設定し、V-Ray VFBのディスプレイ補正のOCIO設定にある「画像に保存」オプションにチェックを入れます。これにより、V-Rayはディスプレイ変換を保存イメージに適用します。
重要: ディスプレイ補正の二重適用を避けるため、いずれかの方法のみを使用する必要があります。
.exr / .vrimg (32bit float/16 bit)の出力ファイルを VFB の結果と一致させるにはどうすればよいですか?
RAW出力(レンダリング設定 > フレームバッファ > V-Ray Raw イメージファイル)または VFBの保存ボタン長押し>”全ての画像チャンネルを単一ファイルに保存” から保存されたリニア画像(32/16bit)は、V-Ray VFBのディスプレイ補正のOCIO設定の「画像に保存」オプションが有効になっている場合でも、デフォルトではディスプレイ補正なし(つまりRAW)で保存されます。
様々なポストプロセスアプリケーションとVFB間で見た目を一致させるための標準的なワークフローは、ポストプロセスアプリケーション側でV-Ray VFBと同一のディスプレイ補正(OCIO Configと設定)を適用する事です。
例:
Photoshopでの例:
- .exr / .vrimg (32/16 bit)をPhotoshopで開きます
- 編集 > “OpenColorIO 設定”を開き、”OpenColorIo機能を有効化”します。
- 編集 > “OpenColorIOに変換” を開きます。入力カラースペースを “scene liner(ACEScg)” にセットします。
- V-Ray VFB ディスプレイ補正のOCIO設定と一致させてください。設定は OpenColorIOメニュー(ウィンドウ > OpenColorIO)にあります。デフォルト設定を使用する場合は、以下のようになります:
作業用スペース: ACEScg
表示: ACES 1.0 SDR-video
ディスプレイ: sRGB – Display
ChaosPlayer での例:
- .exr / .vrimg (32/16 bit)をChaosPlayerで開きます
- カラーマッピングロールアウトを開きます
- ルックアップテーブルオプションを右クリックします
- 読み込み… を選択します
- 3ds Max で使用しているOCIO configファイルを読み込みます
デフォルトでは次の場所にあります:
C:\Program Files\Autodesk\3ds Max 20XX\ColorManagement\ocio_configs\3dsmax_default_ocio\ - V-Ray VFB ディスプレイ補正のOCIO設定と一致させてください。デフォルト設定を使用する場合は、以下のようになります:
カラー空間: ACEScg
入力の解釈: Linear
ディスプレイ: sRGB
ビュー: ACES 1.0 SDR-video
別の方法 (おすすめしません)
8ビット形式と同じ様に、リニアファイル(32bit/16bit)にディスプレイ補正を保存する方法があります。業界のフロー的に推奨できない(本来はコンポジター側でビュー変換を適用すべき)ですが、どうしても32bit/16bit RAWイメージにビュー変換をベイクしたい場合、これには2つの方法があります:
方法1:
3ds Max のカラー管理設定で「レンダリング出力の既定値」でリニアと対数形式の自動変換を「表示/ビュー変換」に設定し、リニア形式およびログ形式の表示およびビュー変換の設定をV-Ray VFB ディスプレイ補正のOCIO設定に一致させます。これで 3dsMaxはリニア/ログ形式のフォーマットにディスプレイ変換を適用して出力します。
方法2:
3ds Max のカラー管理設定で「レンダリング出力の既定値」でリニアと対数形式の自動変換を「変換なし」に設定し、V-Ray VFB ディスプレイ補正のOCIO設定の「画像に保存」オプションにチェックを入れます、
さらにV-Ray RAWイメージファイルの保存設定で「VFBの色補正をRGBチャンネルに保存」チェックを有効にします。これにより、V-RayのRAW出力は32/16bitのRAWリニアファイルにディスプレイ変換を適用します。
重要: ディスプレイ補正の二重適用を避けるため、いずれかの方法のみを使用する必要があります。
3ds Max デフォルトカラー管理設定(OCIO:ACEScg)で作業する場合、特定の色をVFBと一致させるにはどうすればよいですか?
特定の色(例えばWebカラー)をVFB上の結果で一致させるには、カラーピッカーとカラースウォッチの表示設定とビューのプロパティを調整し「ACES 1.0 SDR-video」ビュー変換を考慮する必要があります。
手順:
- 3dsMaxの レンダリング > “カラー管理”を開きます
- “表示とビュー”ロールアウトで「拡張設定を表示」にチェックを付けます
- “カラーピッカー” および “カラーサンプル”オプションのチェックを解除します
- 両方のビュー変換オプションを「ACES 1.0 SDR-video」に設定します。
- 例えば #f04e41(240, 79, 65) の Web カラーを合わせてみましょう
- マテリアルエディタでVRayColorノードを作成します。
- VRayColorのRGB原色を「なし」に設定します
- カラーピッカーを開き、Webカラー名またはそのRGB値を入力します。
- VRayColorノードをマテリアルに接続しレンダリングします。
- VFB底部にある「修正された色を表示」ボタンをクリックすると、Raw値ではなくRGB値が表示されます。色が一致するはずです。
3ds Max デフォルトカラー管理設定(OCIO:ACEScg)で作業する場合、テクスチャの外観を維持するにはどうすればよいですか?
3ds Max OCIOデフォルトカラー設定で作業する際に、特定のテクスチャの外観 (例: sRGB) を維持するには、VRayOCIOノードを通じて逆変換を適用する必要があります。
重要:3ds Maxに付属の config.ocioファイルには(3ds Max 2026時点では)、画像を逆変換するための「ACES 1.0 – SDR Video」に対応する入力スペースが含まれていません。カスタムの config.ocio を使用する必要があります。Marcin Piotrowski氏によって、適切に動作する代替OCIO設定が提供されています。詳細はChaosフォーラムをご覧ください。
手順は次の通りです:
- VRayBitmapノードを作成し画像を読み込みます。
- VRayBitmapノードで、以下の設定を行います。
- 色空間変換関数を「種類:なし」に設定します。
- RGB色空間パラメータを「RGB原色:Raw」に設定します。
- VRayOCIOマップノードを作成しVRayBitmapの間に挿入します。
- VRayOCIO を以下に設定します:
- カスタムの OCIO config を読み込みます(上記Chaosフォーラム参考)
- モードを ColorSpace にセットしパラメータを以下にセットします:
In: ACES 1.0 – SDR Video sRGB
Out: ACEScg
3ds Max デフォルトカラー管理設定(OCIO:ACEScg)で作業する場合、VFBのバックグラウンドレイヤーでイメージの見た目を維持するにはどうすればよいですか?
特定のバックグラウンドレイヤーで特定画像(例:sRGB)の見た目を維持するには、VFB バックグラウンドレイヤーの色変換オプションを使用して逆変換を適用する必要があります。
重要:3ds Maxに付属の config.ocioファイルには(3ds Max 2026時点では)、画像を逆変換するための「ACES 1.0 – SDR Video」に対応する入力スペースが含まれていません。カスタムの config.ocio を使用する必要があります。Marcin Piotrowski氏によって、適切に動作する代替OCIO設定が提供されています。詳細はChaosフォーラムをご覧ください。
手順は次の通りです:
- 3dsMaxの レンダリング > “カラー管理”を開きます
- カラー管理モードを「OCIO – カスタム設定ファイル」に設定し、上記フォーラムからダウンロードしたカスタムOCIO設定を読み込みます。
- V-Rayフレームバッファを開きます
- バックグラウンドレイヤーを作成し、画像を読み込みます
色変換を “OCIO” に設定します
入力色空間 を「ACES 1.0 – SDR Video sRGB」に設定します
3ds Max デフォルトカラー管理設定(OCIO:ACEScg)で作業する場合、マテリアルエディタでテクスチャノードを正しくベイクするにはどうすればよいですか?
マップとVRayBitmapにロードされたベイク済みバージョンで同一の結果を得るには、3ds Maxのレンダリング出力のデフォルト設定を適用せずに保存する必要があります。そうしないと、ディスプレイ補正がベイクされ、元に戻す際にディスプレイ補正が二重に適用されてしまいます。
手順は次の通りです:
- スレート/コンパクト マテリアルエディタを開きます。
- マップを右クリックし「マップをレンダリング」を選択します
- 必要な設定を行い、出力パスを選択します。
- レンダリング出力ウィンドウで「カラー変換」を「変換なし」に設定します。
- VRayBitmap経由で出力したテクスチャを読み込み直します。
- 画像形式に応じて適切な「色空間変換関数」を選択します。一般的に「3ds Maxから」を選択すると正しい結果が得られます。
制限事項
3dsMax標準のOCIOカラー管理でDRすると、別のマシン担当部分のバケットの明るさが異なってしまいます。
これは、Backburner と DR を介したネットワークレンダリング(どちらも3ds Maxサーバーモード[3dsmaxcmd]を使用)と新しい OCIO カラーマネジメントに関する、Autodesk側の既知の制限事項です。
この問題は 3ds Max 2026 以降で解決されています。
3ds Max 2024/2025 のバージョンの場合、回避策としては、3ds Maxのカラーマネジメントを無効にし、V-Ray側のOCIOカラーマネジメントを行うように設定してください。方法については、ACEScg ワークフロー設定ガイドをご覧ください。
非リニア画像 (.jpg、.png) を保存する際、アルファチャンネルがディスプレイ補正されます。
これは Autodesk側の既知の制限事項です。3ds Maxを経由する全ての画像出力に影響します。これには以下が含まれます:
- 3ds Maxの共通出力(レンダリング設定 > 共通パラメータ > レンダリング出力)
- V-Rayの個別レンダーチャンネル(レンダリング設定 > V-Rayタブ > フレームバッファ > レンダーチャンネルを分割)
- VFBの「現在のチャンネルを保存/別々のファイルに保存」
これは、V-Rayの Alphaチャンネルだけでなく他のカラーデータチャンネルや、他のレンダリングエンジン(例:スキャンライン、Arnold)の出力でも同じ症状が出ます。
これを回避したい場合は、3ds Max側のカラー管理オプションでレンダリング出力の既定値を「変換なし」に設定し、VFB ディスプレイ表示の OCIO モードで「画像に保存」オプションをオンにします。
3dsMaxレンダリング設定「共通」タブから .png ファイルを保存するとAlphaが欠落する
これはオートデスク側の既知の問題です。「アルファチャンネルを保存」オプションを有効にした状態で、「共通」出力(「レンダリング設定」>「共通」>「レンダリング出力」)と新しい 3ds Max カラー管理 OCIOデフォルト を使用して .png ファイルを出力するとこの問題が発生します。
この問題は 3ds Max 2026 以降で解決されています。
3ds Max 2024/2025 のバージョンでの回避方法としては:
- V-Ray VFB設定から.png画像を保存する:「レンダリングチャンネルを分離」出力、またはVFBから
- 新しいパスを入力する前に、適切なビット深度とアルファを持つ既存の.pngファイルを選択する
- 3dsMaxのカラー管理をOCIO(ACEScg)から、従来のガンマワークフローに戻す
3dsmaxcmd.exe 経由でレンダリングすると結果が異なります
これはオートデスクの既知の問題です。「outputName」フラグと新しい OCIO カラーマネジメントを使用して 3dsmaxcmd.exe で 8ビット画像 (.jpg、.png) を出力すると発生します。画像は「ACES SDR 1.0 – Video」ビュー変換がベイクされず「トーンマップなし」で保存されます。この問題は Arnold と Scanline でも発生します。
回避策は、3ds Max シーンを3dsmaxcmd.exeでのレンダリングにコミットする際に「-gammaCorrection = 1」フラグを追加することです。
3ds Max OCIO カラー管理に関する制限事項の完全なリストは、Autodesk ドキュメントに掲載されています。

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