MaterialX と V-Ray: 3Dクリエイティビティの次世代ワークフロー

[この記事はChaosのBlogを翻訳した物です]

Maya および Houdini Solaris 用のV-Ray 6, Update 2より V-Ray にMaterialXが統合され、マテリアルの交換とシームレスなコラボレーションががどのように容易になったかを解説します。

MaterialX は、チーム間およびツール間でマテリアルを効率的に交換する為の扉を開きました。マテリアルを記述するこの新しい標準フォーマットは、V-Ray 6.2のMaya および Houdini (およびVRayStandalone、ChaosCloud)で利用できるようになりました。このリリースが V-Ray for Maya、 V-Ray for Houdini(Solaris)およびその他の V-Ray 製品で解き放つ新しい可能性を見ていきます。

MaterialXとは?

MaterialX は、DCC アプリケーションとレンダラーの間でマテリアルを交換するためのオープン スタンダードフォーマットです。当初は Industrial Light and Magic 内で開発され、その後オープンソース化され、大手VFXスタジオやアニメーションスタジオ、ソフトウェアベンダーによって拡張されました。これはマテリアルを記述する一般的なフォーマットで、アプリケーション間でルックデベロップメントデータ(質感)を別のプラットホーム転送するときに、シェーディングネットワークを手動で再作成したり、シェーダをテクスチャにベイクしたりする必要がなくなります。最終的に、これによりアーティストは、ツール間の互換性の問題を心配することなく、アセットの作成から最終フレームに至るまで、制作パイプラインのさまざまな段階で一貫した外観を作成できるようになります。

ユニバーサルなシーンディスクリプション (USD) フレームワークは、アプリケーション間でシーンデータを転送する機能だけでなく、柔軟なアセンブリデータの共有化の道を開く機能として、より多くのアプリケーションで採用が見込まれています。 MaterialX を USD 形式に組み込むことで、アーティストはジオメトリ (USDを使用) とシェーディンググラフ (MaterialXを使用) の両方を転送するための包括的なソリューションを実現できます。

MaterialXで何が可能になる?

MaterialX はいくつかの異なる角度から見ることができます。一方で、ほぼ全てのシェーダを記述する標準化された方法が提供されるため、パイプラインの後の段階で再利用できるようシェーディングネットワークの構成が標準化されます。しかし、より重要なのはアプリケーション間での効果的なマテリアル交換への障壁を打ち破ることです。 MaterialX を使用すると、Maya などのアプリケーションから Houdini などの別のアプリケーションにシェーディングネットワークを取り込み、プロセス中に完全な編集機能を維持できます。さらにMaterialXシェーディング グラフはレンダラー間でも互換です。つまり、アーティストはグラフのどの部分も再構築することなく、同じマテリアルを異なるレンダラーに投げて、ある程度似た結果を期待できます。いくつかの例を見てみましょう。

ツールの相互運用性

特定の例に進むと、アーティストは Maya でアセットの完全なルック開発を作成し、それを Houdini に転送して、同じシェーディングネットワークで編集できるようになりました。変更を Maya に戻すことも、Houdini でシェーダを作成または置き換えることもできます。

チームの相互有用性

これは最終的に、アーティスト、部門、さらにはスタジオ間のコラボレーションの促進につながります。手動でシェーダーを再構築したり、自動化されたデータ交換パイプラインを維持したりする時間を費やす必要がないということは、アーティストが使い慣れたツールを使用して、最も効率的に作業できる場所で創造性を発揮することに集中できることを意味します。

V-Ray でのMaterialX サポートのロックを解除

およそ1年前、Chaosチームはアーティストのワークフローを強化するという明確なビジョンを持って、V-Ray での MaterialX のサポートに取り組み始めました。私たちは、SideFX Houdini の Solaris の V-Ray Hydra デリゲート内でMaterialXをサポートするだけでなく、V-Ray Standalone やそれに基づく V-Ray for Maya などのV-Ray統合環境でMaterialX シェーディングノードをネイティブにレンダリングすることも目指しました。さらに、任意の .mtlx ファイルの単純な読み取り専用ローダーを V-Ray に組み込んで、USD ステージ外の任意のオブジェクトに適用できるようにし、アーティストのツールセットの拡張機能として任意の MaterialX ライブラリを使用できるようにしたいと考えました。 これらを組み合わせるとチームにとっては大きなチャレンジでした。現在の実装がどのようになっているかは次の通りです。

Houdini では、Hydraアーキテクチャがレンダリング API として機能し、さまざまなレンダリング エンジンを USD と統合できるようになっています。したがって、Hydra デリゲートは、レンダラ (V-Ray など) と USD フレームワークの間のブリッジとして機能します。 V-Ray の Hydra デリゲートは、Houdini の Solaris で作成された MaterialX シェーディンググラフを解釈できるようになりました。

Solaris では、V-Ray は MaterialX Builder VOP で使用できる多くのテクスチャ ノードに加えて、標準サーフェスマテリアルをサポートします。アーティストは、テクスチャをロードするための MtlX Image VOP、ジオメトリ アトリビュート/primvarsをサンプリングするための MtlX Geometry Property Value、または追加の Math および Procedural VOP の 1つを使用してシェーディンググラフを構築し、標準サーフェス入力ソケットに接続するデータをさらにカスタマイズできます。

Solaris はさらに、アーティストがパイプラインの後の段階でシェーディング グラフを再作成および編集できる機能を提供します。これは、マテリアルネットワークの編集 LOP を使用して簡単に実現できます。マテリアルを渡して「ロード」ボタンをクリックすると、編集用に再構築されます。

MaterialXのV-Ray Standalone統合により、アーティストはお気に入りのデジタル・コンテンツ・クリエーション(DCC)ツールからシーン記述を生成し、シーン生成に使用したDCCとは独立して、コマンドラインまたはChaos Cloudを介してレンダリングすることができます。
これは、V-RayとV-Ray Hydraが同じ数のMaterialXノードを解釈でき、サポートが一貫していることを意味します。この共有トランスレータの利点は、V-Ray for MayaとSolarisの間でUSDデータの読み取りとレンダリングが均等になることです。

V-Ray for Maya は、V-Ray Standalone に厳密に基づいており、USDステージにロードされたすべての MaterialX シェーダに対して同じレベルのサポートを取得します。 V-Ray for Mayaは、MayaのLookDevXエディタもサポートしています。アーティストは、MaterialXグラフを作成して USDステージにプッシュしたり、V-Ray IPRでインタラクティブに更新してステージからロードされたグラフを読み取って変更したりできます。

MaterialX はシェーディング ノードのライブラリとして提供されます。 MaterialX グラフをレンダリングできるようにするには、V-Ray がこれらのシェーディング ノードをサポートする必要があります。現時点では、LaMaノードを除くほとんどのノードがサポートされています。アーティストは Maya の LookDevX で直接 V-Ray シェーダを作成し、MaterialX を利用したアプリケーション間で交換可能な V-Ray シェーディングデータを利用できます。

V-Rayマテリアルは、Maya から直接 .mtlx ファイルにエクスポートすることもできます。

最後に、V-Ray 6.2 は .mtlx ファイルを単独でロードし、含まれているマテリアルを USDステージ外のシーン内の任意のオブジェクトに適用できる為、MaterialXファイルでマテリアルライブラリを構築できるようになります。

まとめ

V-Ray は、USD および MaterialsXと全面的な互換性を持つようになりました。 V-Ray 6 Update 2 では、Maya と Houdini の Solaris にMaterialX のサポートが追加されました。さらに、完全に編集可能なシェーディンググラフを、MaterialXをサポートする DCC (およびレンダラー) 間で相互交換し、V-Rayでレンダリングできるようになりました。Maya/Houdini以外のV-Ray製品ではUSD/MaterialXの読み取り専用機能が利用可能です。これにより、本当に一度作成すれば、どのアプリケーションへもほぼそのままデータを移動できるようになります。

The following two tabs change content below.
株式会社オークでV-Rayをサポートしています。