V-Ray ルミネアライト

複雑な照明器具のレンダリングを劇的に高速かつ正確に行う技術

V-Ray 7 で導入された V-Ray Luminaires(ルミネア) は、複雑な照明器具を短時間で迅速にレンダリングする新しい方法です。 V-Ray開発者の “Vlado” 氏がその仕組みを説明しています。(この記事はChaosのBlog記事を日本語訳しています

リアルな人工照明器具は、屋内と屋外の両方でフォトリアルなビジュアライゼーションを作成する為に不可欠です。現実の世界では、これらの照明器具が放つ光は、光源とその周囲の拡散面、透過面、または反射面を非常に複雑に組み合わせたものになります。ただし、このような照明器具からの全体的な照明を正確にシミュレートすることは負荷が高いタスクであり、多くの場合、妥当な時間枠で結果を得るために単純化されてしまいます。

Chaos 製品に含まれている Cosmos ライブラリには多くの照明器具が含まれており、その一部はオリジナルの物理バージョンを製造する会社によって提供されています。そのため、3Dシーンで製品を正しく表現するために全ての部分が省略せずにモデル化されています。これらのモデルは非常に正確ですが、レンダリング時に光のシミュレーション負荷がやや高い傾向があります。

V-Ray 7 で導入された V-Rayルミネアは、そのような照明器具を効率的かつ正確にレンダリングするためのまったく新しい方法を提供します。事前計算ステップでは、照明器具の周囲のライトフィールドの非常に正確にキャプチャします。つまり、照明器具の表面から任意の方向に放射される光の量を計算し、これを関連するファイルに保存します。V-Ray 7では V-Ray Luminaires のタグが付いた照明モデルが Cosmos ライブラリからインポートされると、ジオメトリと光源に加えて、VRayLuminaireライトと呼ばれる新しいタイプのライトオブジェクトも作成されます。このライトは照明器具の一部を取り囲み、外部から見たときの発光をエミュレートします。 VRayLuminaireライトは、事前計算されたライトフィールドを参照して、ライトの色や強度等を好みに調整する事もできます。

以下は、シーンが 2 つの照明器具で照らされる単純なセットアップの例です。各器具は、現実世界でよく見られるように、ランプ ェードで囲まれた光源で構成されています。

ランプシェードだけで照明されたシーン

これをそのままレンダリングする(V-Ray Luminaires不使用)と、結果は次のようになります。

V-Ray Luminaires不使用で 21分 50秒

サンプルレートの可視化 [赤い程サンプルが多く行われている箇所(Max Subdiv)、青い程サンプルが少ない事を意味します。]

このシーンは、AMD Threadripper 2990WX CPU で約 22 分でレンダリングされます。結果は 1/40 AAサブディビジョンであってもかなりノイズが多く、イメージ内のほとんどのピクセルでは、指定されたノイズしきい値に達することなく、ピクセルあたりの最大サンプル数 (サンプルレート画像の赤いピクセル) が使用されています。これは、シーンの照明の大部分がランプシェードの内部からシーンに反射する光によるものであるためです。さらに、デフォルトでは、V-Ray は適切な時間内にレンダリングを実行するために GI の一部をクランプします (これはグローバルスイッチにある「セカンダリRayの最大明度」(Max ray intensity)パラメータによって制御されます)。ただし、これにより照明器具からの照明がわずかに暗くなります。 。

一方、V-Ray Luminaires(予めベイクされた照明器具のライトフィールド)を使用して同じシーンをレンダリングすると、結果は次のようになります。

V-Ray Luminaires使用で 1分 1秒

サンプルレートの可視化 [赤い程サンプルが多く行われている箇所(Max Subdiv)、青い程サンプルが少ない事を意味します。]

サンプルレートの可視化 [赤い程サンプルが多く行われている箇所(Max Subdiv)、青い程サンプルが少ない事を意味します。]

V-Ray Luminaires使用するとレンダリングが大幅に高速化されます (使用前22分に対して使用後は 1分) と同時に、ほぼすべての場所でノイズしきい値に達したため、最終結果のノイズも少なくなります。さらにGIのクランプによる光の損失がなく、配光もより正確になります。

別の例は、複雑な光輸送パスを計算する必要がある場合のVRayLuminaireの利点を示しています。この例では、照明器具から放射される光は、内部にある球状ライトらの光を散乱させる薄い紙を通して発せられます。これをそのままレンダラーでレンダリングするには複雑な光の伝搬計算が必要です。

さらにVRayLuminaireを使用しない場合、レンダリングが非常に遅くなり、本来よりも暗くなります。(暗くなるのはV-RayデフォルトでGIを高速化する為に、グローバルスイッチにある「セカンダリRayの最大明度」(Max ray intensity)パラメータが有効になっている為です)

ライトからより正確な発光を取得したい場合は、グローバルスイッチにある「セカンダリRayの最大明度」(Max ray intensity)パラメータを無効にする必要があります。これにより、結果が予想される明るさに近づきますが、計算にはさらに時間が掛かる事になります。min/max 1/100 のアダプティブ・イメージサンプルを使用しても、イメージ内のあらゆる場所で必要なノイズしきい値に達するには十分ではありませんでした (サンプルレート レンダーエレメントにはmaxに達した事を意味する赤い領域が多くあります)。対照的に、VRayLuminaire を使用すると、数分の1の時間でより正確な照明分布で画像をレンダリングできる事が判ります。

Chaos Cosmos のほとんどの照明器具にはVRayLuminaireファイルが付属しているため、それらを使用するには通常通りドラッグ&ドロップするだけです。照明器具にVRayLuminaireファイルが付属していない場合は、ライトに光源がないか、VRayLuminaireを追加しても結果が改善されにくい構造です(たとえば、光源がシーンを直接照らしており、複雑な光の伝達計算が少ない場合)。

なおユーザーが作成したカスタム照明器具用のVRayLuminaireファイルの作成に関するチュートリアルが近々公開される予定です。

VRayLuminaireライトの使い方

照明器具に VRayLuminaireオブジェクトがアタッチされている場合、強度や温度など、器具から放射される光の制御は VRayLuminaire オブジェクトから処理する必要があります。ただし、現時点では VRayLuminaire ライトを無効にしてもライトフィールドの計算が無効になるだけで、照明器具の一部である通常の光源は無効になりません。フィクスチャから放射されるすべてのライトを無効にする簡単な方法は、VRayLuminaireライトの強度を 0.0 に設定することです。

同様に、VRayLightMix システムでは、器具内のオリジナルライトと VRayLuminaireライトが別々に表示されます。これは、今後の V-Ray 7 リリースで改善される予定です。

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