ユーザーインタビュー : 株式会社 意匠計画 [V-Ray MODO]

ChaosGroupの V-Ray for Modo は、株式会社 意匠計画 様の建築ビジュアリゼーション・パイプラインに不可欠な部分になっています。なぜV-Ray for Modoを使い始めたのか、完成画像を作成するためにV-Rayがどのように役立っているのかをお聞きしました。

株式会社 意匠計画 [http://www.i-keikaku.co.jp/] 様は 樋口 壽伸 氏により25年前に設立されました。業界でも早い段階から3DCGでのパース図作成サービスを開始されている老舗の会社様です。

注目すべき点は、Modo+V-Ray と 3ds Max+V-Ray を混在して使用されている事です。多機能な3ds Max + V-Ray をメインにされていますが、ライトウェイトなモデリング・ソフトウェアを検討されていた時期に、当時発表されたばかりの MODO + V-Ray for Modo の組み合わせをベータ版で試され、高評価を得てパイプラインの一部として採用されています。

インタビューは意匠計画の海老様と園田様にお伺いしています。

海:意匠計画 海老澤拓也 様
園:意匠計画 園田浩人 様

–早速ですがV-Ray製品導入のきっかけをおきかせいただけますでしょうか。

海:まずは3ds Maxチームが発足したのですが、そのきっかけが国内のパース屋をライバルとするわけではなく、中国やそのほかの海外のフォトリアルなパースが目立つようになってきたことですね。お客さんから「このクオリティがほしい」という要望が増えてきたため、それを達成するための選択肢としてフォトリアルで世界的に有名なレンダラーがV-Ray一択だったことから3ds Max+V-Rayでクオリティを上げていこうということになったのがきっかけです。

今は3ds MaxチームとMODOチームがあるのですがMODOを利用し始めたきっかけは、以前使用していたメインソフトウェアから3ds Maxへ移行に伴い、少しレスポンスが落ちてしまった部分がありました。そこを埋める為に試験的にMODO+V-Rayを利用してみようという話になりました。

V-Ray + MODOのきっかけは2014年秋ころだったかと思いますが、V-Ray for MODO (BETA)の情報がありましたので、MODOのレスポンスの良さと相まって利用できるということでV-Ray for MODOのリリースを待っていたという背景もあります。

ハイクオリティにするためのツールとしてV-Rayは建築パースでは常識であり必須となっていましたので、
きっかけというほどではないですが、V-Rayを選択したのは必然だったのではないかと思います。

— 導入前と後とでワークフローや効率はどのように変化しましたでしょうか。

海:例えばですが駅ビルのプロジェクトでは14枚の画像を求められた大きなプロジェクトなのですが、
納期が約1ヶ月ありましたが修正依頼が頻繁に届きますので、レンダリングスピードで「当日納品」ができるかどうかというのが一番の焦点になることが多く、V-Rayのレンダリングスピードのお陰でお客さんの修正要望に即日対応できたため、非常に助かった案件の一つですね

レンダリング時間で言うと感覚的にですが今までと比べて10分の1くらいの速さでこなせている感じですね。
1枚に対して何時間もレンダリングにかかってしまうと話にならず、下手したら徹夜してレンダリングを待たなければいけなかったかもしれないので、V-Rayでなければこの案件はこなせなかったと思います。
圧倒的なスピードとクオリティの維持ができたことが達成に繋がった要因だと思います。

–V-Rayのレンダリングとその後の画像のレタッチ(フィニッシング)はどのくらいの比率でしょうか

海:これはほとんどV-Rayだけですね。それ以外には調整レイヤーをすこしと、トーンカーブとかエクスポージャーでやるようなことをPhotoShopで若干調整する程度です。
ですので、レンダリング後の画像に対してもほとんど手間がかからなくなりました。

MODOのレンダラーでもクオリティを引き上げることはできるのですが、
クオリティを上げようとすると飛躍的にレンダリング時間が長くなってしまいます。
レンダリングが早い設定はもちろんあるのですがクオリティとスピードとのバランスがあわないので、
V-Rayの速さと品質の高さは非常に魅力的ですね

また、他にも弊社では3ds MaxとMODO用にそれぞれV-Rayを利用しているのですが
クオリティの統一や設定を社内のデザイナーチームで共有できるので、そのあたりも魅力的だった部分ですね。

海:3ds Maxだけの環境からMODO環境へ移行するのにチームとして発足できたのはMODOの学習が時間外ではなく、プロジェクトと並行して行えたことが大きかった部分はありますが、それはもともと3ds Max+V-Rayを
利用していたことでV-Ray for MODOへのハードルが低かったことも一因だったと思います。
V-Ray for MODOがなければもしかしたら今はMODOチームがなかったかもしれないですね。

–V-RayありきのMODOチームだったんですね
–V-Ray for 3ds MaxとV-Ray for MODOではお仕事の比率はどのくらいでしょうか

海:弊社では3ds Maxチームのほうが人数が多いので、人数とほぼ同じ比率で3ds MaxとMODOのプロジェクトが割り振られている感じですね。大体7:3くらいで3ds Maxチームが多いです。

比率とは違うのですが弊社では一人で最初から最後までプロジェクトを行いますので、大きなプロジェクト以外は基本的にプロジェクトの1から10までほぼ一人で納品まで済ませてしまいます。

弊社の場合はほとんど毎日が納期みたいなものなので、発注を受けてから納期が2日後などの非常に短納期の仕事も受領から納品までを一人でこなしています。
期間の長い大きなプロジェクトなどではチームで作業を分担することもありますが、そうでない場合は作業を分けてしまうと効率が悪くなってしまうことが多いので、基本的にはあまり作業を分担することはありません。

明確に別れている作業は仕上げの際に行うレタッチくらいですね。レタッチャーチームが別にいますのでその部分は分けています。

–月間ではどのくらいのプロジェクトが動いておりますでしょうか。

海:一人あたり物件数で数えると20件以上していますね。
弊社では手描きのパースの仕事もありますので、そういった物件も含めるともう少し多いかもしれません。

–ほとんど毎日納品ですね!

海:そうなんです。本当にほとんど毎日納期なんですよ。

–手書きもあるとのことですが、CG納品と手書き納品との比率はどのくらいでしょうか

海:手描きの比率としては全体の2割程度じゃないかと思います。

–V-Ray導入前に比べて解消された点はありますでしょうか。

海:V-Rayを導入する前はデータが出来ていてもレンダリング待ちということがあったので、お客さんに
「あとはレンダリングだけなので明日までお待ち下さい」といった納期延長の交渉をよくしていたのですが
今はもうそういう連絡もしなくなりましたね。

園:逆に困ったことはレンダリングに時間がかかるという言い訳ができなくなりましたね(笑)

–つまり製作時間そのものに時間を費やすことができたということですね

海:そうですね。待ち時間がだいぶ減ったのでその分の時間で手直しができたり、
クオリティを上げることができています。そのおかげでお客さんからも喜んでいただけてますし、
作業時間が増やせたおかげでご注文を受けられる数も増えました。

–そうすると結構受注できる結構件数が増えたんじゃないでしょうか

海:それがそうでもないんですよ。。。

と言いますのも、導入前は納期に間に合わせるようにしていた部分があったので
お客さんの求めるクオリティに仕上げるところで終わってしまっていたんですが、
手直しや作り込む余裕ができるようになったので、その分ハイクオリティで納品するようにレベルが

それでも以前よりは時間的な余裕が増えましたので、並行して作業を行うことができているため
全体としては大体3~4割くらいは受注件数が増えていると思います。

昔はそこそこのレンダリング結果をPhotoShopで加工して仕上げるといったことが多くあったのですが、
今ではモデリングとレンダリングだけでほぼ仕上がるので、今は殆どそれだけで完成させることが多いですね

–レタッチチームへの作業依頼数が減っているという風にも聞こえますが、レタッチでの仕上げ精度などレタッチチームでの作業はどのように変化しましたでしょうか。

海:V-Rayを導入した時点でレタッチの作業量がだいぶ減ったのはあるのですが、その反面フォトリアルの物件ではとくに物販(服飾や観葉速物など)の追加などのモデリング以外のリアリティをレタッチで足すような感じですね。

昔は陰影から殆どをレタッチで仕上げていたのが、その必要がもうないのでほんの少しのレタッチであれば
自分でさっとやって終わらせることが多くなりましたね。

–まさに初めにお伺いしたように一人でプロジェクトの完結していることがほとんどということですね!

両名:その通りです。

–モデリングツール以外にご利用いただくようなのはどういったソフトウェアがありますか。

海:看板やサイン関係でお客様から要望があったりするとレタッチチームがイラストレータやPhotoShopなどの画像加工ソフトを使ったりするくらいですね。動画が必要な場合はAfterEffectをたまに使用するくらいです。

それと頻度は少ないですがZBrushも少し使っています。

–ZBrushはどういった内容で利用されるのでしょうか。

海:弊社ではZBrushユーザーがおりまして、サイドビジネスと言うか要望があるとキャラクターモデリングも
やりますよ、という程度に使うくらいですね。

–最近の一番大きなプロジェクトもしくは苦労したプロジェクトはなんでしょうか。

海:やはり、先程お話しました駅ビルが大きかったですね、1ヶ月かかり複数名でプロジェクトに取り掛かっていたため大型案件でした。

もう一件大きくて苦労したのは駅のプロジェクトが大変でしたね。このモデルは360度全視野のビューが求められたため全て作り込む必要があったので非常に手間がかかりました。そのため、レンダリングの速さには助けられました。

–そのプロジェクトの納期はどのくらいありましたでしょうか。

海:1ヶ月半くらいですね。特にこのモデルは内装づくりも必要でしたのでチームを組んで手分けして作業しました。通常の短納期のプロジェクトとちがって曖昧な部分を全て排除するくらい時間をかけるプロジェクトでしたね。

–このプロジェクトではお客様とのやり取りで変更や修正はどのくらいありましたでしょうか。

海:大体10回くらいですね。

–意外と少ないんですね 。

海:このモデルの場合はもともと実施設計でお客様から図面をいただいていたので、
モデリングに対するものではなく、建物の色味や照明に関するチェックと修正がほとんどでした。

園:逆に複雑な図面を読み込むのに時間がかかりましたね。屋上だけでも50ページくらいあったので、全体としては非常に分厚い図面で読み込みが大変でした。

–そういった設計図面ですとイメージとしてはRevitとかBIM系ソフトウェアをイメージしてしまうのですが、、、

海:お客さんにBIMを利用している方がいるそうで、もともとはBIM系でやるつもりだったらしいんですね。構造計算や積算なんかを含めて検証ができるのは知っているんですが、BIMだと時間がかかりすぎてしまい着工に間に合わないということで弊社に依頼がきたんです。

納期に間に合わせることができたのはMODOのレスポンスの良さとV-Rayの品質だけでなくレンダリングの速さがあったおかげだと思います。

–3ds Max版とMODO版とでUIがことなりますが、苦労はありましたか。

海:3ds MaxチームとMODOチームで業務を分けているので操作そのものに対する苦労はなかったです。
V-Rayの設定について教え合うときもそのものの理屈を説明してもらえば分かったので、そのあたりは苦労は少なかった気がしますね。ただ理屈を理解していない人から教えてもらおうとすると、聞いてるこっちもさっぱりでした。

–他のレンダラーを利用した経験や検討したことはありますか?

海:ないですね。
海外の事例をみてフォトリアルはV-Rayを使うしかないと思っていたので、V-Ray以外だと3ds MaxやMODOの標準レンダラー比較のために触る程度ですね。

–御社の強みをぜひお聞かせください。

園:もともと弊社の代表は商業施設などの施工会社で設計をやっていたところ、独立して弊社を設立しました。
代表は当初設計業務をやっていたのですが、手書きのパースがかけたものですが25年前だったのでCGはもちろんなかった。

設計業務をやりつつパースも描いて納品を行っていたのが、だんだんパースの依頼が増えてきてパースがメインになってきたんですね。そこで培われた手書きの技術でしょうか。例えばお客さんとの打ち合わせの中で、計画をデザイナーからいただいてからプレゼンまでのスパンが非常に短いんですね。1週間ない場合もあり、ショッピングセンターなんかだとプロジェクトの期間が短いのでその期間内でパースを提出する必要があります。そういったときに手書きのパースがかけると、打ち合わせ中におおよその方向性を決めてから作業に進めるので非常に早く動けます。

–プロジェクトを一人でほとんど行うっていうのは初見の打ち合わせの段階からなんですね。

海:はい。
お客さんとのイメージの共有がその場でできるということは強みとしてもちろんなんですが、お客さんがイメージをもっていないことが意外とよくあるんですよ。そのため、お客さんの話からイメージを具現化していってお客さんの求めるものを視覚化してあげることで、お客さんを安心させて作業に進めるというのが強いですね。

わたしの場合は前まではずっと手書きしてたんですが、最近はちょっと手書きから離れてしまってるので
詳しく話をきいて言葉で具体化するスキルを身に着けてきましたね。

弊社としては”お客さんの前で描いて共有する”という社風があるので、それを押してるんですけどね。

園: こういう仕事をしていると口下手な人が多いと思うんですけど、彼の場合はたくさん喋りますね。
海: 時々お客さんに営業と間違われて「制作の方にちゃんとつたえてくださいね?」と念押しされたりするんですけど、「大丈夫です。私が制作まで全部やりますから!」っていうことは度々有りますね
園: うちはもう最初から最後まで本人がするのでとにかく流れが早いです。他社さんはほとんど営業と制作とで分業していると思うんですけど、うちは社内チェックや伝達が必要なくお客さんと直接チェックができるのでその分早いですね。
園:これはうちの社風なんですが、「オールマイティであれ」っていうのがありますね。

–なるほど、そうすると誰かが躓いたときに誰でも手伝えるっていうことですよね。

海:はい。その通りです。
ただこれだと逆にみんなが独立できる実力を身に着けているということなので、実際にうち出身者が競合他社になっているっていうのは実際あるんですけどね。(笑)

–悩ましいですね

海:そうですね、ただやっぱり自分で受けた仕事を1から10までやりきれるのはやりがいの面ではかなりあると思うんですよね。やっぱり達成感を得られるのはうれしいですね。

–本日はお忙しい中貴重なお時間をいただきありがとうございました。

※このインタビュー記事に含まれる全てのイメージの著作権は 株式会社 意匠計画 [http://www.i-keikaku.co.jp/] にあります。

※このインタビューは ChaosGroup.comにもサクセスストーリーとしてグローバル[英文]で掲載されております。

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